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■剱岳山行記録
剱岳は、遠くから眺めてみても、近くで見ても、登っても、とても魅力のある、すばらしい山だった。
●8月6日(1日目)
大型で強い勢力を持った台風10号が、四国・近畿地方に近づいている中、今回の剱山行がスタートした。
自宅を午前4時30分出発、吉井ICから上信越道・長野自動車道と乗り継ぎ、途中姥捨SAで朝食をとり、扇沢に着いたのが7時35分。平日で、台風情報の影響か、さほど待ち時間もなく、立山・黒部アルペンルートは観光気分で順調に通過した。 途中黒部ダムの放水と、その為発生する七色の虹を見ながら室堂に着いたのが9時55分。室堂ターミナルで身支度を整え、10時20分、今日の宿泊予定の剱沢小屋に向けて出発した。観光客がスニーカーで闊歩している室堂平・ミクリガ池周辺をぬけ、雷鳥沢キャンプ場で 昼食を取った後、雷鳥坂の急登に取り付いた。別山乗越の剱御前小屋(13時10分)に着いた時には、辺りからはガスが出てきて、剱岳・別山の分岐あたりからは、すでに前剱・剱岳が見えない状態になった。登山道の脇に咲く可憐なイワツメクサを見ながら14時20分、剱沢小屋に到着。暖かいシャワーを浴び(山小屋では初めての経験)、テラスにでて見ると、外は霧と雨、おまけに雷も鳴り出した。明日の天気を気にしながら20時消灯した。
●8月7日(2日目)
4時30分起床・5時朝食、前日の天気予報(晴れ後曇り)どおり、多少ガスがかかっているものの、登山日和に恵まれた。小屋主の佐伯さんから危険・落石注意個所が記入されているルートファインディング図を戴き注意を受けた後、5時37分剱沢小屋を出発、雪渓を二度横切り25分程で、剱山荘前を通過した。この時期には珍しく、小屋前のベンチには登山者の影もなく、タテヤマリンドウやクルマユリが咲く比較的穏やかな斜面を登りつめると、一服剱のピークで(2,618m 6時45分)、ここで小休止。竹蔵のコルを過ぎたあたりから、いよいよ岩場となり、大岩の左を巻いて鎖場を通過、険しくなってきた岩礫を登りきると前剱のピークに辿り着いた。(2,813m 7時40分)ここでまずは中休止。前剱を下ると、すぐに岩陵のトラバース。鎖こそ架っているが今までよりも険しさを増し、平蔵のコルからは、いよいよ岩の殿堂剱の最難関といわれる鎖場、カニのタテバイ(登り専用路)だ。30メートルほどの垂直な岩壁がそそり立っていた。三点確保に留意しながら、最初は左側の直登ルートを登り、最後右側にトラバースして終了。もしかしてスリップして落ちたらと思うと少し緊張した。女は度胸で、妻は案外あっけなく後ろからついてきた。そして、9時10分剱岳山頂に到着した。今日は、剱沢小屋間のピストンなのでタップリ時間があり、穏やかな山頂では、ガスの切れ間から時折見える周囲の展望を楽しみながら、ゆっくりと至福の時を過ごした。 10時下山開始、早々に下り専用路の難所カニのヨコバイとハシゴ、さすがに下りのほうがスリル満点(ビビッちゃいそう)。 我々より少し前に出発した二組(4人と6人)のパーティーがハシゴの下降で停滞。ハシゴを跨げないでブルッテいる姿を見ていると、滑落するのではないかと見ている私達のほうが恐くなった。やがて、平蔵のコルから登り返し、前剱のピークに戻った頃(11時30分)には、気持ちの余裕も出てきた。高山植物をみながら、辿ってきた道を振り返りながら、早く下ってしまうのが惜しいかのように、ゆっくりと下山した。途中、一服剱からの下山道で、剱頂上で一緒だった、宮崎県延岡市から来た黒木さん一行と合流、剱山荘のベンチで暖かいうどん(どんべい)を食べ(13時00分〜13時30分)、剱沢大池(小屋主の佐伯さんに聞いたが本来名無し池)に映る剱岳・前剱を飽きるまで眺めてから、剱沢小屋に14時20分、無事帰還した。17時からの夕食は、アツアツの串カツをいただき大満足。夕刻から、台風10号の影響が徐々にでてきたのか、風が強くなり、18時ごろに部屋の窓には、外側から戸板が閉てられた。談話室で佐伯さん(小屋主)の、山の話を聴きながら、静かに時間が過ぎていった。
●8月8日(3日目)
夜半に、あまりにも強い風雨の為、たびたび目が覚めた。台風10号の速度が遅くなったが、富山地方に向かっているとのこと。今日の当初予定では、別山から真砂岳・富士ノ折立・大汝山・雄山から一の越を経て、室堂に下山するコースを予定していたが、尾根道は風が強く危険で、佐伯さんに「山は逃げないし、無理をすることはないよ。また、秋にとっておけば」との話になり、一番安全な別山乗越から新室堂乗越・雷鳥平のルートをとった。途中、「別山・別山乗越の分岐」で後ろを振り返ると、剱沢小屋の食堂に掲げてあった昭和51年9月、新田次郎氏の直筆『雄大なるカールの底、ひそやかなるひとびとのいとなみ、ここは星と水、岩と雷鳥、夢見るは永遠の青春』の一節のイメージが、まさにこの場所ではないかと、感無量となった。台風を気にしながらの下りも、お花畑あり、雷鳥親子との対面ありで、とても充実した山行になった。山旅のフィナーレとして、開山伝説の残る有名な場所である「玉殿の岩屋」に寄り、安全登山を祈願し、「花と岩と雪の殿堂・剱岳」をあとにした。
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