北アルプス南部の盟主は、その山容から、やはり槍ガ岳に軍配を上げる人が多いだろう。それほど槍ガ岳はきわだった魅力をもっている。
 登山日:08/20

 新穂高温泉のバスターミナルから、舗装道路の坂を登り、新穂高ロープウェイの駅の横を通り。すぐ上手の駐車場から林道に入る。やがて小鍋谷の橋である。橋を渡って右俣沿いに林道を進むと、やがて右側に「穂高平近道」の標識がある。急ぐなら急登の近道をとればよいが、林道をのんびり歩いた方が楽である。 穂高平には牧場と季節営業の山小屋(穂高平避難小屋)がある。新穂高から約1時間、程良い山の景色の中でゆったりした時間が過ごせる場所です。

林道

穂高平小屋

 この先、林道はサワグルミやブナ林の中を、白出谷(しらだしだに)出合までほぼ水平にのびている。水流のない白出谷を渡ると、道は針葉樹林の中の平坦な道となる。左下に右俣谷の瀬音を聞きながら進むと、チビ谷を渡る。水流はほとんどない。さらに進み、オオシラビソの林を登ると、滝谷出合である。白出谷から滝谷まで、わずか200メートルほどの標高差である。

奥穂高岳登山口

ジャンダルムを望む

 滝谷は水量もあり、川原からは雄(お)滝のすさまじく流れ落ちるさまが眺められる。丸木橋を渡り、対岸に移ると、岩壁に藤木九三氏のレリーフがある。ここの湧水は飲用に適している。槍平へは、南岳側の山腹を巻くように登っていく。南沢を渡り、しばらく樹林帯の緩い登りを続けると突然視界が開けて、明るい槍平小屋に出る。小川が流れて別天地の風景が広がる。

奥穂高岳登山口

滝谷ドームと涸沢岳

 槍平は、南岳や奥丸山への道が分岐するところでもある。ここから道は左岸沿いに樹林帯へ入る。やがて最後の水場に着く、充分に水を補給してから出発。大喰岳の西尾根の末端をジグザグに登ると、ダケカンバの大木のある台地に登り着く。「宝の木」とよばれるところである。ここから道は飛騨沢に入っていく西鎌尾根がよく見える。

飛騨

飛騨沢は長いロード

 西鎌尾根がよく見える。縦走をする人たちが確認できる。中崎尾根越しに見える笠ヶ岳が、高度を上げるにつれて美しい全容を現してくる。

 西鎌尾根がよく見える。縦走をする人たちが確認できる。中崎尾根越しに見える笠ヶ岳が、高度を上げるにつれて美しい全容を現してくる。

 岩屑の道をジグザグを繰り返すこと約2時間ようやくにして標高3000メートルの飛騨乗越にたどり着く。長い、つらい、の言葉がぴったりの登りだが槍沢の道よりはずっと良い。飛騨乗越からは、槍沢越しに、蝶ガ岳、常念岳、大天井岳などの山々が目に飛びこんでくる。乗越から左にジグザグの道を約15分で槍岳山荘に着く。

飛騨乗越から常念を望む

槍ヶ岳山荘

 標高差120メートルの穂先への岩壁登り。ルートは登り下り別の道があり、鉄のクサリやハシゴが設置されている。槍ガ岳山頂はそれほど広くはないが、眺めは最高である。特に北アルプス南部や北部の山脈の連なりがよくわかり、まさに日本一の眺めであろう。盛夏の朝は順番待ちができるほどの混雑ぶりです。

岸壁からの眺め

槍ヶ岳山頂

東鎌尾根と常念岳
東鎌尾根と常念岳
西鎌尾根
西鎌尾根

飛騨乗越から大喰岳

 槍岳山荘を出発してまず大喰岳を目指します。キャンプ場の横を通り過ぎて、ジグザク道を飛騨乗越まで下る。ここは標高が3020m、日本最高所の峠とも言われています。この飛騨乗越から大喰岳への登りがこのコース中で一番辛い登りです。たいした標高差ではないが、長時間の休憩のあとで身体も慣れていない上に空気も薄いし… ゆっくりと一歩ずつ登る。

大喰岳山頂

2段のハシゴ場

 大喰岳を下って中岳との鞍部に着くと、中岳の山頂が覆いかぶさるようにそびえます。でもここの登りは見た目ほどではありません。まもなく 2段のハシゴ場に到着し、これを登りきるとあっと言う間に山頂到着です。山頂からは大喰岳の万年雪を従えた槍ヶ岳が印象的に天を差しています。

槍ヶ岳の絶景

 ここからがこの コースのハイライト。中岳から南岳へと続くのびやかな3,000mの稜線の道、そして穂高連峰へと続く山並み… 「これが日本アルプスだ!?」という感じの風景です。そして中岳を下りきると槍~穂高の縦走路中で唯一の水場があります。中岳の残雪が消えるまでの8月中下旬まではここで水を取ることができる。

中岳山頂

南岳への縦走路

 水場からは穏やかなアップダウンの稜線歩きが続きます。途中の平べったい石がたくさんあるピーク(2986m地点)から南岳の縦走路の道が確認できます。

岩場のトラバース

 このあたりは基本的に穏やかな道ですが、一箇所だけ岩場をトラバースするところがあります。特にむつかしいというわけではないが、過去にここで滑落して重傷という事故もありました。ここの通過だけは注意が必要です。岩場を過ぎるとすぐに道標の立つ天狗原の分岐点です。ここから南岳へはゆっくり登って20分。3032.7mの山頂に立つと穂高の荒々しい岩壁が目に飛び込んできます。ここからの風景は南岳小屋がアクセントとなって、とても絵になる風景です。

南岳

南岳山頂

北穂・奥穂方面
北穂・奥穂方面

南岳小屋

 南岳小屋前を西にガラ場を道票にに従いジグザグに下る。やがて、右に回りこみわずかな岩の切れ間の岩盤帯にかかる丸太橋で抜ける。ヤセ尾根に登り上がるとハイマツを保護するための木道が敷設されている。木道の幅も狭く強風などの場合は注意が必要です。しばらく岩壁を見ながらの稜線歩きとなる。

岩の切れ間の丸太橋

やせ尾根と木道

急な下りのはじまり

 やがてこんな看板が出てきます。(→)~下りの方へ。これからムチャクチャ急な下りのはじまりです…。登山道を下る場合は、ここに書いてある通りに「あわてずにゆっくり」注意をしたい。

傾斜のきつい下山

ハシゴの多い南岳新道

 岩を回り込みここから下を見下ろすとさらに覆いかぶさるような岩肌に続く道が見えます。注意をして鞍部に下りる。ここで標高2600m、南岳西尾根のコルと呼ばれるところ。シナノキンバイなどの花がたくさん咲くところです。

槍平小屋に着く。帰路は往路を新穂高へ